« 清雅会・2008年5月・予行演習 | トップページ | 志野袋・飾り結び »

2008年6月10日 (火)

追悼

 氷室冴子さんが、亡くなった。

 少女小説家の氷室さんは、当時学生だったわたしにとって
 「オトナの女性」とはかくあるものか! という存在であった。

 関東風すき焼のおいしさを教えてくれたのも
 シャンソンを生できかせてくれたのも
 夜の高速道路をタクシーでぶっとばしたのも
 箱根の高級旅館に泊めてくれたのも
 サウナに入れてくれたのも
 大島紬をいじらせてくれたのも
 みんな、氷室さん。

 あんなにおいしいそうにビールを飲み、
 あんなに楽しそうにご飯を食べ、
 あんなに幅広い話題をもち、機関銃のごとくしゃべる彼女は、
 思えば、当時まだ30代半ばであったのだ。

 就職してからお会いすることもなくなってしまったが、
 ああ、氷室さん、わたしの年齢で、一軒家を買って、地下を全部お風呂に改装してたんだなあ、と、時折思ったりしたものである。

 そういえば、「恋する女たち」に茶道のシーンが出てきたなぁ。
 主人公が、茶道部なんだった。

***
 でも茶を点てる亭主の気の引き締まるような、それでいて優雅で静かで隙のない所作や、 それを見守る客のたった一服の茶を待つ不思議に高揚する期待感みたいなのがまぜこぜになって醸し出す茶席の雰囲気というのは、 ほんとに好きだ。
***
 茶席は初めてのせいか、ザキはあたしの所作の一つ一つをくいいるように凝視ている。
 それがてれくさいやら楽しいやらで、なんとなく心が和んできた。
 そう。
 茶道にはやっぱり、何かしら心を解きほぐす効果がある。
***

 この場面に出てきたのが「流し点」という点前で、
 「流し点」が好きなのは、きっとその印象が強いのだと、今さら気付いた。
 つまり、それだけ、影響が深かったのである。

 「雄々しく」「素敵に」「たくましく」「元気で」「しかもかわいらしい」
 女の子の姿を、
 わたしは氷室さんの小説から教わった。

 「凛々しく」「潔く」「物事をよく考え」「なにより生きていることを楽しむ」
 「いっぱしの女」の姿を、
 氷室さん本人から教わった。

 告別式の今日はぴーかんと晴れて、
 「どぉ、いい天気でしょう~!」
 「写真、なかなかよかったでしょう~」
 「ピースピース!」
と、今にも声がきこえてくるようで、泣けた。

 久しぶりの電話で、
 実はこういうことなのだと病気について話し、
 そして葬儀委員長を依頼されたのだと、
 涙ながらの挨拶があった。
 葬式の段取りも、すべて本人が生前に行ったのだと。

 作家は老後が心配、とあちこちの保険に入ってたのに。
 老後になる前に、亡くなってしまった。
 なんのご恩返しもできないまま。

 なにもできなかった、けど、だからこそ、
 今生きているものがしなくてはならないことが、いっぱい、ある。

 氷室さん。
 ありがとうございました。

***
asahi.com より引用
 「なんて素敵(すてき)にジャパネスク」「海がきこえる」などで少女小説のブームを担った作家の氷室冴子(ひむろ・さえこ、 本名碓井小恵子〈うすい・さえこ〉)さんが6日、肺がんで死去した。51歳だった。(中略)北海道岩見沢市出身。 77年に第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作に入選、デビュー。「ざ・ちぇんじ!」や「クララ白書」など、集英社の「コバルト文庫」 を中心に、軽やかな文体でベストセラーを生んだ。宝塚歌劇団をモデルにした漫画「ライジング!」の原作も手がけた。

|

« 清雅会・2008年5月・予行演習 | トップページ | 志野袋・飾り結び »

コメント

最期まですごい人だったね。

中学時代、むさぼるように読んだなぁ。

・・・泣けてくる・・・。

投稿: ヨコハマヨーコ | 2008年6月12日 (木) 18時41分

 最期まですごかった。ほんとに。
 いろいろ読み返して、当時(中学、高校時代)いかに影響されてたか思い出したなー。サロメチールを目に塗ってみたり。出身大学を模試の志望校にしてみたり。
 ちょうど先週の今頃、訃報で呆然としてました。もう1週間。早い・・・。

投稿: まりも | 2008年6月13日 (金) 19時56分

まりもさん、こんにちは。心中お察しします。

そうですね‥誰しも心のよりどころにしている人っていますよね。私も年齢のせいか、だんだんそういった尊敬する人の訃報に接する機会が多くなってきたような気がします‥。

でも、氷室さんの魂は、作品の中に生き続けています。そのスピリットをいつまでも大切にしていきたいですよね。
まとまらないコメントですみません。

投稿: two-tea | 2008年6月15日 (日) 10時52分

 思い返してぼーっとしてるだけでなく、そこからつなげていくのが大事なんだなあと思います。
 さしあたり、風炉の灰、篩わなくちゃ。

投稿: まりも | 2008年6月17日 (火) 23時09分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170159/41490618

この記事へのトラックバック一覧です: 追悼:

« 清雅会・2008年5月・予行演習 | トップページ | 志野袋・飾り結び »